国連ボランティア(UNV)として途上国経験や専門性を身に着けることは、国連職員になるためのエントリーポイントとしておすすめです。
しかし気になるのはUNVの待遇ではないでしょうか。UNVは職員ではないので、スタッフメンバーと比べると、随分と待遇が悪いです。でも実は!任地によってはそこまで悪くない暮らしができるのです。UNVが一体どれくらいの給与・手当を貰えるのか、概算をまとめてみました。
UNVの種類
UNVは大きく分けるとInternationalとNationalの2つのカテゴリーがあり、その中でも様々な区分があります。
このカテゴリーの詳細についても、もし需要があればおいおい解説したいと思います。
今回はInternationalの中でもスタンダードな”International UNV Specialist”の待遇について取り上げます。
毎月もらえる金額
Monthly Living Allowance:約2,000~2,900ドル
UNVの手当はMonthly Living Allowance(MLA)と呼ばれており、Volunteer Living Allowance (VLA) に都市ごとに定められたPost-Adjustment Multiplier(PAM)を掛け合わせた合計によって算出されます。
VLAはベース給与で、1,736ドルで固定値です(2024年8月現在)。
PAMは治安・物価・生活状況(ハードシップ)などに応じて国ごとに変動します。
つまり、PAMの数値が手当の額を決めるということですね!
では、PAMの数値はどうやって決められているのでしょうか?
国連のハードシップの基準は、UN Duty Station Classificationによって、A/B/C/D/Eの5段階に分けられています。Aが最も暮らしやすく、Eが最も生活が厳しい事務所です。
一般的に、Eレベルの事務所が多い国はPAM調整がなされ、手当の額は多くなる傾向にあります。
ただし、首都がA/Bなど住みやすいカテゴリーに分類されている国では、地方でEレベルにカテゴライズされている事務所でも、 Living Allowanceの額は首都と同じです(例:ケニアのナイロビ(B)・カクマ(E)など)。
各国のPAMの水準はICSCのサイト上で確認できます。毎月数値は更新されていますが、急激な物価変動などがない限り、基本的には同水準のパーセンテージが保たれています。
たとえば、ICSC上でケニアを検索してみます。
ケニアの場合はMultiplierが53.1%(2024年7月現在)と出ているので、これをVLAにかけた額がPAMとなります。そのため、MLAの総計は下記となります。
下記にMLAの支給額例をまとめてみました。
これを見ると、必ずしもハードシップとPAMが連動していないことがわかりますね。
ソマリアやシリアの額がそこまで高い水準でないのは衝撃です。コンパウンドから出ないので、あまりお金がかからないのでしょうか・・・
- ウガンダ・カンパラ(B) = $2,141
- シリア・ダマスカス(E) = $2,166
- ネパール・カトマンドゥ(B) = $2,182
- スリランカ・コロンボ(B) = $2,230
- ジンバブエ・ハラレ(C) = $2,252
- エジプト・カイロ(A) = $2,272
- ルワンダ・キガリ(A) = $2,282
- マダガスカル・アンタナナリボ(B)= $2,321
- エチオピア・アディスアベバ(B) = $2,364
- ソマリア・モガディシュ(E) = $2,388
- アフガニスタン・カブール(E) = $2,403
- マラウィ・リロングウェ(B) = $2,405
- ケニア・ナイロビ(B) = $2,412
- ケニア・カクマ(E) = $2,412
- ブルンジ・ブジュンブラ(C) = $2,411
- タンザニア・キゴマ(D) = $2,442
- コートジボワール・アビジャン(B)= $2,456
- ナイジェリア・アブジャ(C) = $2,448
- タイ・バンコク(A) = $2,476
- DRC・キンシャサ(C) = $2,591
- 南スーダン・ジュバ(E) = $2,694
- 中央アフリカ・バンギ(D) = $2,793
- スーダン・ハルツーム(C) = $2,926
Well-Being Differential:0 or 1,000ドル
国連職員には、特にハードシップの高い事務所で勤務する職員に対して、Danger Payという危険地手当が一律で毎月$1,698支払われます(国内での滞在日数などで変動あり)。
UNVは危険地でこれを受け取れない代わりに、Well-Being Differential が毎月$1,000、一律で受け取れます。
Am I entitled to Danger Pay?
Answer: Danger Pay is not a UN Volunteer entitlement. It is a special allowance established for internationally and locally recruited staff required to work in locations where hazardous conditions prevail, as established by the International Civil Service Commission.
UN Volunteers receive Well-Being Differential. UN Volunteers are not UN staff members; they are not subject to the UN Staff Regulations and Staff Rules or the pay, benefits and other conditions in those staff rules and regulations. They have the status of UN Personnel, and their assignments are governed by the applicable Conditions of Service and the terms of the Contract issued in each case.
参照元:UNV Webページ
Danger Payの対象となる事務所はD/E事務所の一部となっています。
(D事務所でも対象となっていたり、E事務所でも対象から外れていたりするので、基準はよくわかりません・・・)
UN ICSCのデータから、対象となる事務所をまとめてみました。アフリカ・中東の地方事務所や難民キャンプなど、かなり生活環境が厳しそうな事務所が並んでいます。
長くなってしまったので、下記をクリックしてご確認ください。
- アフガニスタン
Bamyan Faizabad Gardez Herat Jalalabad Kabul Kandahar Khowst Kunduz Maymana (Faryab) Mazar-I-Sharif Pul-i-Kumri
- カメルーン
Bamenda Maroua - 中央アフリカ
Bambari Bangassou Bangui Berberati Birao Bossangoa/Soumbe Bouar Bria Kaga-bandoro Ndele Obo Paoua - チャド
Baga Sola Bol - DRC
Aba Aru Baraka Beni Bili Faradje Kabalo Mboko Nyunzu - エチオピア
Dollo Addo Fugnido Gambella Itang Mekele Melkadida Shire/Endaselassie - イラク
Baghdad Kirkuk Mosul - ケニア
Alinjugur Dadaab - リビア
Benghazi Tripoli - マリ
Gao Kidal Menaka Mopti Tessalit Tombouctou - ニジェール
Abala Diffa Ouallam Tahoua Tillabery - ナイジェリア
Damaturu Maiduguri - パキスタン
Peshawar Quetta - ソマリア
Baidoa Belet Uen Boosaaso (Bender Cassim) Dhobley Dolow Galkacyo Garowe Jowhar Kisimaio Mogadiscio - 南スーダン
Aweil Bentiu Bor Bunj (Maban) Gokmachar Jam-Jang Juba Kapoeta Kuajok Malakal Pibor Rumbek Torit Wau Yambio Yei - スーダン
Abyei Ed Daein El Fasher El Geneina Golo (W. Darfur) Khor Abeche Nertiti Nyala Saraf Umra (Omra) Shangal Tobaye Tawilla (Tawilah) Zalingei - シリア
Aleppo Damascus Daraa Deir-ez-Zor Homs Qamishli Sweida Tartous - イエメン
Aden Hodeidah Ibb Sa’ada Sana’a
一時金
毎月支給される額とは別に、着任時・離任時に支給される一時金があります。
Settling-in-Grant :約4,000~6,000ドル
着任時の一時金。Monthly Living Allowance の2ヵ月分弱くらいが支給されます。
Exit Allowance :225ドルx勤務月(1年契約の場合、225*12=2,700ドル)
離任時の一時金として毎月225ドルずつ積み立てられ、離任時に支給されます。
満額支給は任期満了したときのみです。
その他カバーされるもの
航空券費用
赴任・離任時の航空券費用が支給されます。離任時は任期満了したときのみ支給されます。
ホームビジット費用
A/Bクラスの事務所は2年に1度、C/D/Eクラスの事務所は1年に1度、帰国費用が支給されます。
まとめ :月額支給額は約2,000~4,000ドル 、一時金が約6,000~8,500ドル
まとめると、月額支給額は下記のようになります。
- Danger pay指定事務所 → 3,000~4,000ドル
- Danger pay指定事務所以外 → 2,000~3,000ドル
一時金はMonthly Living Allowanceの額で変動し、約7,000~9,000ドルです。
駐在員の住むような豪華な家に住まなければ、貯金はできなさそうですが、切り詰めればなんだか暮らしていける金額です。
さらに、自分の応募する事務所での待遇を具体的に知りたい場合は、UNVのサイトから、Volunteer Entitlement Caltulatorというツールを使って検索できます。
最後までご覧いただきありがとうございます!
もっと知りたいことなどあれば、ぜひコメントやお問い合わせフォームから教えてください。
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